声明等

梅光学院大 研究室訴訟判決の声明 

            梅光学院大学・研究室訴訟、不当判決に対する声明

 去る5月15日、広島高等裁判所(民事第3部倉知真寿実裁判長)は、地裁判決(山口地裁下関支部榎本康浩裁判長)の判決を踏襲し、原告団の請求を棄却する不当判決を下しました。私たちは、この一連の判決は、憲法に規定される学問の自由と大学教員の教育・研究活動を軽んじるものです。こうした判断を下した司法に対し、強い憤りと怒りを表明します。
 この裁判は、学校法人梅光学院理事会(樋口紀子理事長)が、新しい校舎(北館、2019年供用開始)を建設した際、これまでの個室型の研究室(以下、「研究室」)を廃止し、「教職協働」として教員と職員の職場空間を同じにしました。この新しい職場は、学生等の往来から隔離されておらず、誰でも入ることができる構造のため、静謐な環境が保たれないなど研究業務等に支障が生じたとして、9人の専任教員が研究環境の侵害を理由に損害賠償を求めて提訴したものです(2021年8月27日)。
 梅光学院大学教員の研究環境は、一般的な研究室から職員と同じ空間とデスク(座席数10名程度)を共同利用する形となり、座席は指定されておらず(フリーアドレス)、学生との面談や個別打合せ等に使用する低いパーテーション付きのブース席(2つしかない)の連続使用は90分まで、研究等業務に使用する一般座席は60分以上離席できないため、柔軟な学生対応が難しく、授業の度毎にPCや文献等を撤収しなければならなくなりました。また、一般的な研究室ではないため、研究資料や業務上の書類は上記空間に一竿程(施錠できないため、盗難前提の対応が指示されている)と図書館に三竿程しかありません。つまり、梅光学院大学教員は、衆人環視、かつ、静謐とは言えない、文献を広げることすら難しい環境の中で、教育・研究活動をせざるを得ない状況におかれました。当然、プライバシーに配慮が必要な学生対応も難しく、私物を置いたまま所用に離席することも躊躇せざるを得ない環境になりました。
 原告団は、新館で研究室が廃止されたことによって教育・研究活動に著しい支障が生じていることを訴え、労働契約上の付随義務、憲法や学教法の大学設置基準の趣旨などから、研究に専念でき、オフィスアワー等の個別学生対応にも適切に対処できる研究室を整備する責任が学院にあることを主張しました。
 地裁・高裁に共通している考え方は、大学設置基準で研究室を備えることとなっていること、研究室を利用させることが雇用契約上の付随義務であることを前提として、研究室の広さや設備等の基準はないこと、研究室の在り方は研究内容によって多様であること、私学においては教育方針や既存設備、財政状況等多様な検討要素があることから、「どのような研究室を設置し、どのように教員に割り当てて利用させるかについて、相当に広い裁量を有していると解するのが相当」であるというものです。そして、梅光学院大学については、法人・大学の新館コンセプトを優先するために、「原告らの専任教員としての研究業務および教育業務に一定の支障が生じたとしても、それらの支障が、前記の被告(注:学院)の裁量を逸脱すると評価できるほどに大きなものでない限り、原告らの被告大学(注:梅光学院大学)において研究室を利用する権利ないし利益を侵害したことにならない」と判示しました。
 設置する施設の内容に関する裁量が大学にあることは否定しません。しかし、大学教員が、研究に専念でき、他者の存在を気にすることなく個別学生の指導や相談ができ、入試業務など秘匿性の高い業務ができる環境は保障されるべきです。研究に関しては、他者からの盗用、設置者や権力などからの監視や介入が生じる可能性を極力排除した環境が保障されるべきです。地裁・高裁の教育・研究よりも私大経営の裁量を優先する判断は、学生指導や教育面への配慮のみならず、学問の自由を軽んじるものと言わざるを得ません。
 私たちは、地裁・高裁の、私大経営上の裁量等が研究活動に優越するという判決は、大学の教育・研究の力を減退させるとの考えから、これを到底許すことはできません。私たちは、地裁・高裁判決を覆すべく上告し、適正な司法判断を得るための取組を継続する決意です。

                           2024年6月10日
                            梅光学院大学研究室訴訟原告団 
                            九州地区私立大学教職員組合連合
                            梅光学院大学教職員組合    

梅光学院大 未払い賃金請求訴訟判決の声明

                      声 明

 2月2日、山口地裁下関支部は、梅光学院理事会(理事長 本間政雄)が2016年(平成28年)4月から一方的に給与規程を改訂し、教員の賃金、および、退職金を大幅に削減したことについて、改訂前の金額との差額を支払うことを命じる判決を下しました。この判決は、事実認定の一部にいささか難点があるものの、請求額をほぼ全額認めたことから、原告団の全面的な勝利判決といえます。

 梅光学院理事会は、2015年(平成27年)、前年職員に一方的に導入した評価に準ずる給与制度を教員に導入することを明らかにしました。それは、本俸表改訂と諸手当の減額や廃止、退職金算定基礎を縮減するものであり、原告団内では最大月15万円も削減される程重大な改訂でした。教職員有志は、この件が明らかにされると、教職員組合を結成し、この改訂の根拠・合理性の説明を求め、団体交渉を要求しました。しかし、理事会は、改訂内容に固執し、回数だけこなす不誠実団交を繰り返し、2016年(平成28年)4月から一方的に改訂を実施しました。この間に理事会が明らかにした賃金削減の理由は、2015年(平成27年)まで10年間、単年度ごとの学院財政が赤字であり(帰属収支差額における支出超過)、この収支状況が継続すると10年で資金ショートするので、それを回避するためというものでした。
 しかし、判決は、理事会が収支構造の改善を検討することの合理性は認めつつ、原告団が提出した鑑定意見書に基づき、①資金余剰額は改善していたこと、②短期的支払能力に問題はなかったこと、③資金繰りに問題が生じる危機的な状況ではなかったことを明示して、この賃金削減に高度の必要性はなかったと結論づけました。
 また、理事会の代償措置をとったから賃金削減は容認されるとの主張については、不利益の大きさとの比較から、容認されないとしました。

 ただし、判決には、理事会の不誠実団交や過半数代表者選出における非民主的手続きに関する事実認定について、実態を見ることなく、理事会の対応を安直に容認するなど、批判されるべき箇所があります。しかし、判決が、理事会が主張する財政難を斥け、代償措置をとってもなお、今回の賃金削減には相当性がないことを認めたことは事実です。

私たちは、梅光学院理事会は、本判決を真摯に受け止め、直ちに給与規程を2015年(平成27年)の状態に戻し、すべての教職員に対し、賃金の差額を支給すること、専断的・独善的な学園運営を改めること、こうした事態を招いた経営責任を明確に示すことを強く求めます。


                                         以上

声明

     菅義偉首相による日本学術会議会員推薦者の任命拒否に関する声明


                       2020年10月8日
                       九州地区私立大学教職員組合連合執行委員会


 10月1日、日本学術会議が推薦する新会員6名の推薦について、菅首相が任命拒否したことが明らかになりました。菅首相によるこの行為は、日本学術会議の独立性と、憲法第23条の学問の自由を侵害するものです。さらに、任命拒否した理由を説明せず、また、「人事を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能」(加藤官房長官)という、不誠実な態度と学問や科学を政府の従属下におくかのような認識も示されました。私たちは、菅首相による任命拒否をはじめとする、政府の一連の言動に対して強い憤りと抗議の意思を表明します。
 日本学術会議は、日本学術会議法(以下、「同法」)の前文において、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」とすることを宣言しています。
 さらに、同法では、「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」「科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること」等の職務を、「独立して」(同法3条)行うことを保障しています。そして、同法7条等では、同会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」ことになっています。この推薦・任命制度は、国家公務員法との関係で形式的な任命であることが政府の公式な見解であり、過去、日本学術会議の推薦者の任命を拒否したことはありません。このことは、学術会議の独立性の担保、すなわち、国家権力による学問や科学への介入を排除するための制度です。今回の菅首相による任命拒否は、こうした崇高な日本学術会議設立の理念とは真っ向対立し、制度の趣旨を転換させる暴挙といえます。
 日本学術会議の新会員推薦は、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考・推薦することとなっています(同法17条)。研究や業績という客観的な評価に基づく被推薦の任命を拒否する以上、菅首相は、その理由等を説明する責任があります。しかし、前政権時同様、現政権も説明責任を果たしていません。また、法律に規定されていない日本学術会議に対する監督権という言葉を持ち出すにいたっては、政府には、科学や学問が、権力から独立し、自由が守られるべき存在であることへの理解が全くないことの表明であり、非民主的な体質をあらわにしたといえます。
 私たちは、菅首相に対し、日本学術会議が推薦した新会員6名を直ちに任命することを要求します。
 日本学術会議には、諦めることなく、政権による学問・科学への介入を拒否し、学問・科学の独立と自由を守るべく取り組み抜くことを求めます。